6月6日

夜が始まった


今夜はどこに連れて行かれるんだろう。後悔が人々の引き留める手の力を弱め、かける声をかすれさせ、存在を薄れさせていく。この土地でこの部屋で一人腕を抱くだけだ。


空が明るいな。


自分に対して気まずい。馬鹿だったからかな。でもどうにも抑えられなかったんだ。


また間違えているんだろうな。でも間違えていることが今は嬉しいだなんて、本当に馬鹿だな。


怖いよ。


そんな綺麗なものの話をされても困ってしまうんだ。僕に必要な天使は片羽の堕天なんだ。


いつ化け物が出てくるか予想もつかないので、一緒に歩いていた女の子の右手に違和感を覚えた瞬間にも女の子を撃たなければならなかった。右手を鳥の骨のような角度に捻じ曲げて苦しんでいた。どこを取ってもホラーな夢だった。橋本府知事が出てきた以外は。徹夜で仕事していて、めっちゃいい人だった。


自分が蟻地獄のような気がしてしまう。こんな所に誰も堕ちてこなければいい、幸せに笑ってて欲しいなんて言うくせに、堕ちてきたときの為にせっせと策略を巡らしているんじゃないか。


姪とか見てると今の子ども服ってすごい可愛い。センスがあってお金のある親とそうじゃない親で子供に差が出ちゃって、なんだか子供が可哀想。


何も無くてもいつも心臓がドキドキしていて本当に情けない。


レーサーメットを被った自転車の人が通り過ぎざまに僕の耳元で「謎が無い」って囁いていった。


傷ついてぼろぼろになる以外の、自分の全てを捧げる以外の好意の持ち方が分からない。


傷つかないように人を好きになれる人なんているの?


他の人はどうなんだろう。寂しさだけで体が震えて吐き気がしたりするんだろうか。


湯船に浸かりながら蛙の声を聞く。今年初めて鳴く蛙も居るだろうに、おくびにも出さずに得意げに鳴く。不遜で居るがいい、こうして君らに楽しませてもらっている僕が、君らを支配している王なのだから。


蛙は僕を制圧している気でいるんだろう。


風呂場の外には母と弟が居る。彼女らもまた王であり奴隷なのだ。僕は母達と自らの境遇のおかしみについて語り合いたい。だが彼女等は人間の言葉でしか語れない。その事が僕は寂しい。彼女らに蛙を支配し支配される言葉を覚えてもらいたい。


今日久しぶりにジョギングをしてみた、嬉しい。散歩をするだけで頭が痺れて寝込んでいたのが嘘みたいだ。


吐き出す吐息に欲望が混じって熱くて重い。足りない、足りない。抱き締めたいの?絞め殺したいの?こんなところ、見られたくない。


僕はもう誰も自分の為に貪りたくない。どうしたら青くなれるんだろう。


喉にまだ赤い痕が残っているようだ。その痕が誰の手と合うか、知っている。


溶け合いたい……………。